株式会社GF 代表取締役社長 藤崎耕治 様
はじめに:工事の安全性に対する深刻な懸念と中断の要請
株式会社GF様が計画されている(仮称)嶺北香美ウィンドファーム事業の1号風況ポール設置工事について、新たな調査結果により、設置予定地周辺が地質的に極めて危険であることが判明し、私たち地域住民は深刻な不安を抱いております。 貴社におかれましては、工事着手にあたり安全性を十分に確認されているものと理解しておりますが、現状ではその安全性を裏付ける科学的根拠が著しく不足していると考えざるを得ません。 つきましては、地域住民の生命と財産を守るため、貴社に対し、工事の一時中断と、より詳細かつ客観的な調査の実施を強く求める次第です。
1. 計画地周辺の地質的脆弱性に関する認識の欠如と情報の不備
貴社が提出された「計画段階環境配慮書」には、計画地周辺の地質的脆弱性に関する重大な認識不足と情報収集の不備が見られます。
旧版地質図への依存と最新情報の軽視: 貴社の配慮書は1974年作成の旧地質図のみを参照しており、2018~2019年に発行された最新の詳細地質図を一切使用しておりません。計画地周辺には、層に沿って剥離しやすい千枚岩や片岩などの変成岩が広く分布しており、この地質的脆弱性を貴社が軽視していると判断せざるを得ません。
地すべり誘発要因の分析不足: 数多くの断層、硬軟が混在する「混在岩」、降雨により粘土化しやすい地層など、地すべりを誘発する複合的要因についても、配慮書ではその存在が示唆されるにとどまり、潜在的な危険性や影響に関する具体的な分析・評価が著しく不足しています。これでは一般の読者が危険性を十分に認識することは困難であり、これは重大な欠陥です。
2. 大規模地すべり地形の存在と進行中の地表変動の未調査
貴社は、計画地周辺における大規模地すべり地形の存在と、現在進行中の地表変動という極めて重要な情報を、適切に把握・評価しておりません。
「地すべりの巣」の存在とクリープ現象: 防災科学技術研究所の地すべり地形分布図や高知県の赤色立体地図による再調査の結果、1号風況ポール設置予定地周辺の山頂直下には、「地すべりの巣」と呼ぶべき傷跡が密集しており、現在もクリープ現象が進行していることが確認されています。
地盤変動を示す客観的証拠(国土研報告書より):
国土研報告書は、1号風況ポール設置予定地およびその直近周辺が、過去から現在に至るまで、常に地盤の変動が続いている、極めて不安定な場所であることを以下の客観的な証拠をもって明らかにしています。
脆弱な地層構造の確認: 予定地への登り道では、工事の切り通しによって、風化してボロボロになった「千枚岩」と、その上に乗る滑りやすい「赤褐色ローム層」が直接観察されています。これは、この場所が、「滑りやすい層」の上に「崩れやすい層」が乗っているという、地質学的に見て、極めて不安定な構造であることを示しています。(国土研報告書 確定版 P.28, ①~②の地点の様子)
「おじぎする木々」が示す現在進行形の地表変動: 予定地周辺に生えている針葉樹や杉などの太い木々が、一様に反り返るように幹を曲げている現象が確認されています。これは、木々が立っている地面そのものが、「クリープ現象」でゆっくりと滑り落ちていることを示す、最も代表的な証拠です。(国土研報告書 確定版 P.28, ③地点の様子)
幹から生える「二次成長根」が示す変動の継続性: クリープで流れてきた土砂に根元が埋められた木が、生き延びるために、幹の高い位置から新しい根(二次成長根)を生やしている様子が観察されています。これは、この場所の不安定な状態が、長期間にわたって継続していることを示す、動かぬ証拠です。(国土研報告書 確定版 P.28, ⑤)
谷全体が動いている証拠: 予定地近くの谷では、両側の斜面から、木々が谷の中心に向かって倒れかかるように傾いている様子が確認されています。これは、谷の両側の斜面全体が、一体となって、常にゆっくりと動き続けていることを示しています。(国土研報告書 確定版 P.28, ⑥谷の中の様子)
これらの重要な情報を一切反映せず、法令を遵守していることのみをもって「安全性は担保されている」と説明する貴社の姿勢は、住民の安心を著しく損ねるものであり、看過できません。
3. 複合災害リスクへの不十分な安全解析
計画地周辺は、南海トラフ巨大地震や豪雨の影響を強く受ける地域に位置しており、複合災害が連続あるいは連動して発生した場合、そのリスクは計り知れません。 専門家からは、これらの複合的要因に対する安全解析が不十分であるとの指摘があり、現状のまま工事を進めることは、周辺住民の生命と財産を意図的に危険に晒す行為と捉えられても致し方ありません。自然災害の影響を過小評価したままの工事続行は、安全確保の観点から到底容認できません。
結論:工事の一時停止と詳細な調査・住民への説明の要請
以上の事実を踏まえ、1号風況ポール設置予定地周辺が現在も地質的に極めて不安定であり、工事によるわずかな地形改変が大規模な山地崩壊の引き金となる可能性を強く示唆していることを、改めて貴社に認識していただきたく存じます。 つきましては、貴社に対し、以下の条件が満たされるまでは当該工事を一時停止し、改めて詳細な調査と解析結果の公表をお願い申し上げます。
【工事再開の条件】
当該土地の地質等に関する再調査の実施: 最新の地質情報、大規模地すべり地形、現在進行中の地表変動などを網羅した、より詳細な地質調査を実施してください。
安全性の十分な検討と災害を起こさない工法の採用: 上記の再調査結果に基づき、工事の安全性、工法について専門家を交えて十分に検討し、地質的に不安定な条件下でも確実に災害を起こさない工法を採用してください。
住民への詳細な説明と理解の獲得: 工事の安全性、採用する工法、災害リスクへの対応策について、地域住民に対し科学的根拠に基づいた明確な説明を行い、住民の十分な理解と同意を得てください。
貴社が「地球を守るため」という高い理念のもと、事業を推進されていることは承知しております。しかし、そのために、足元にある私たち地域住民の命や、かけがえのない郷土の安全が脅かされてよいはずがありません。
「地球を守る」という壮大な目的が、この地に暮らし、未来を築こうとする私たちの存在を軽んじ、地域社会の最も基本的な安全を破壊する口実となっては、本末転倒です。真に地球環境を思うのであれば、その事業が行われる土地と、そこに暮らす人々の安全を守ることが、事業者としての最低限の責任であるはずです。
つきましては、貴社の理念が真摯なものであることを行動で示していただくためにも、科学的根拠に基づく安全性が確認されるまで、工事の一時中止を強く要請いたします。
以上