[宛先] 株式会社GF 代表取締役社長 藤崎耕治 様 [提出日] 2025年7月28日 [提出者] たまもる
拝啓
貴社が計画中の「1号風況ポール設置工事」について、国土問題研究会による専門的調査により、当該予定地および周辺地域に複数の重大な災害リスクが科学的根拠とともに指摘されました。これらのリスクは、工事の安全な実施を根本から揺るがすものです。
この調査結果を受け、私たちは工事の一時中止を要請しましたが、それに対する貴社の見解と対応について、以下の通り公開で質問いたします。ご回答は文書にてお願いいたします。
なお、本質問状およびご回答内容は、地域住民の知る権利を保障する観点から、原則として全て公開させていただきます。
本質問状は、以下の調査報告書に基づいて作成されています。
「(仮)嶺北香美ウィンドファーム計画に関する調査報告書(その1) 確定版」(国土問題研究会嶺北香美風力発電問題調査団、2025年6月)
上記報告書の全文を添付いたします。本質問状で引用している各項目の詳細な科学的根拠、現地調査結果、地形解析データ等については、この報告書をご参照ください。
なお、同報告書はたまもるホームページでも公開されています。
まず、本計画の全ての前提となる、貴社の地質調査の信頼性について伺います。
質問1-1: 貴社の計画段階環境配慮書では、約50年前(1974年)の広域地質図を参照している一方で、2018年・2019年に発行されたより詳細かつ最新の地質図を用いていません。事業の安全性を検討する上で致命的な情報不足と考えられますが、最新図を用いなかった理由をご説明ください。(※国土研報告書 確定版 P.5「(4) 計画地付近の地質」)
質問1-2: 同配慮書では、地すべりやクリープ現象の要因となる地質の性質(例:片理構造)や地すべり地形に関する記述が一切ありません。このような記載がない中で、どのような根拠に基づいて「安全である」と判断されたのか、論理的にご説明ください。(※国土研報告書 確定版 P.11「4.1.3 株式会社GFの計画段階環境配慮書における地質の記述について」)
国土研報告書は、1号風況ポール設置予定地周辺が、現在も地表面が滑動している「クリープ現象」の活動域であると指摘されています。(※国土研報告書 確定版 P.30「(6)小括」)
質問2-1: 貴社は、このクリープ現象が起きている不安定な斜面において、掘削・盛土・重機の振動などの工事行為が、クリープ活動を加速させ、周辺に小規模崩落や地すべりを誘発する可能性について、どのように評価し、対策を講じるのか、具体的な安定計算の結果等を含めてご説明ください。
質問2-2: 1号風況ポールの基礎やワイヤーアンカーは、このクリープ現象による長期にわたる地盤の変位・荷重に耐えうる構造となっているかどうか、どのように確認されていますか。設計計算書等、客観的な資料の提示を求めます。
国土研報告書は、最新の高解像度地形解析により、計画地、特に1号風況ポール周辺で多数の地すべり地形と地表クリープ現象が密集して存在することを明らかにしました。(※国土研報告書 確定版:P.12-14「4.2.3 地形解析によって検出された地すべり地形」)
これは、事業者が古い地質データを用いていたため十分に把握されていなかった潜在的な土砂災害リスクを示しており、開発が大規模な山地崩壊を加速させる可能性を警告しています。
質問3-1: 貴社は、ポール設置工事に伴う地形改変や排水の変化が、これらの直下にある過去の地すべり地形の活動を再活性化させる(再滑動させる)リスクについて、どのように評価・対応されますか。
風況ポールは一時的な設置物です。事業終了後の原状復旧について伺います。
質問4-1: 国土研報告書が示す通り、当該地には、植生・土壌・火山灰層・風化岩盤が一体となった、極めてデリケートな生態系と保水機能を持っています。このような環境を破壊した後、貴社はどのような方法で、どの程度まで復旧を行う計画ですか。(※国土研報告書 確定版:P.18「4.2.4 現地調査で明らかになった開発予定地の地表変動(クリープ)現象」、P.26「①~②の地点の様子」、P.30「(6)小括」、P.7「(5) 地質の脆弱性の問題」、P.22「(3) 神賀山~豊永峠周辺の環境」、P.1「2.調査内容について」)
質問4-2: 特に、工事によって一度不安定化させた地盤リスク(クリープや地すべりのリスク)を、設置前と同等あるいはそれ以上に安全な状態に復旧させるための工法と、それを保証する科学的根拠をご提示ください。
貴社はこれまで、代替措置により「むしろ安全性が高まる」といった趣旨のご説明をされることがありました。しかし、国土研報告書で示されたのは、山の表層全体が一体となって滑動しているという、極めて深刻な状況です。(※国土研報告書 確定版:P.18「(1) 豊永峠~奥神賀山周辺の状況」、P.23「(4) 松尾越周辺の状況」、P.27「(5) 風況ポール1 号予定地周辺の状況」、P.30「(6)小括」)
質問5-1: 貴社が想定されている「代替措置」(例:排水工事、擁壁設置等)が、
(A)風況ポール地点の局所的対策に留まらず周辺斜面全体を対象とし、
(B)現状よりも安全性が高まる、あるいは少なくとも現状と同等の安定性が確保される
ということを、どのような具体的なメカニズムと科学的根拠に基づいて説明できるのか、ご回答ください。
質問5-2: 上記の代替措置を講じた後の斜面全体の安定性について、定量的なシミュレーション結果(安定解析モデル等)を含めて、客観的な証拠とともにご提示ください。
国土研報告書が示すとおり、1号風況ポール設置予定地周辺は、地域の災害リスクを評価する上で極めて重要な「調査・研究の対象地」です。(※国土研報告書 確定版:P.30「(6)小括」)
質問6-1: 工事によってこれらの貴重な現地の地形情報(クリープ現象や地すべり地形の現状)が不可逆的に失われる可能性がありますが、その重大性について、貴社はどのように認識していますか。原因究明と安全対策が確立される前に、現状を変更することの正当性について、どのようにお考えですか。
以上の諸リスクを踏まえ、工事手法そのものの見直しについて伺います。
質問7-1: 貴社は、工事用道路の規設による地形改変と、それに伴う災害誘発リスクを避けるため、資材一式とバックホー等の機材のヘリコプター運搬といった、より環境負荷の低い代替工法について検討されましたか。検討している場合はその結果を、していない場合はその理由をご説明ください。
上記全ての質問項目に対する、科学的根拠に基づくご回答
私たちが意見書において提示した「工事再開の3つの前提条件」について、貴社として受け入れるか否か、およびその理由
【意見書で示した「工事再開の3つの前提条件」】
① 当該土地の地質等に関する再調査の実施
② 調査結果に基づき、災害を引き起こさない工法を慎重に検討・採用すること
③ 工事の安全性等について、地域住民に説明し、理解を得ること
ご回答期限: 2025年8月22日(金)
本件は地域住民の安全に直結する重大な問題です。
誠意ある、そして科学的根拠に基づいたご回答を強く求めます。
敬具